CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューを受けてくださったのは、株式会社ヒロホールディングス代表取締役社長・向山 孝弘氏です。
ヒロホールディングスは「Smile for All」というミッションを掲げています。その背景には、向山氏自身が笑顔を失いかけた経験や時代と理念のはざまで葛藤し続けた歴史がありました。
ありがとうございます。
大学を卒業後最初に勤めたのはホテルだったのですが、休めたのは年に4〜5日程度、1年のほとんどを働いていたようなものでした。朝6時から深夜2時までの勤務が当たり前で、体重も今は70キロありますが、当時は47キロまで落ちました。
ホテルマンというのは、常に笑顔でフロントに立つ必要がある、CS(カスタマー・サティスファクション)が最優先の世界です。
でも、自分自身もボロボロだし周囲のスタッフもフラフラ。そんな中で笑顔をつくりつづけるのは本当に辛かった。ある時、楽しそうなお客様を見てふと「イラッ」としてしまったことがあったんです。これはとてもショックでしたね。
もともとお客様に喜んでもらうのが好きでホテルに入ったのに、そんな自分がお客様にイラっとしてしまうというのは、もう限界なんだろうなと。
そしてその時「お客様の笑顔だけでなく、関わるすべての人が笑顔でなければ、本当の意味でのサービスなんて提供できないのだ」とも思いました。
はい。ただホテルで経験した働き方はそこまで珍しくもなくて……どちらかといえば「猛烈に働いて儲けろ」というのがスタンダードな時代だったので、転職しても同じだろうなと思いました。
でも自分の中では「お客様と社員と会社が三方良しでないと事業は成長しないんじゃないか」と……その想いはどう転んでも拭えなかったんです。それなら自分でそういう会社をつくった方が早いと思って、起業に至りました。
当時周りに理念経営をしている会社はありませんでしたが「理念のもとで経営してみて上手くいかなければ、私の考えが間違っているんだろう、この考えが正しいかどうか確かめたい」という気持ちもありましたね。
はい。ただ独立してすぐは、理想に対してそれを実現できないもどかしさが大きかったように思います。いいことばかりじゃないというか、むしろ苦労することばかりですよね。
「明日2000万ないと会社が潰れちゃう」なんて日もありましたよ。
仲間が増えていく一方、収益が安定するまでには時間がかかるため、当時は自分の給料をゼロにして、彼らに還元していました。
でもそれでも足りないので、夜はホテルでバスの運転のアルバイトをして、早朝は配達の仕事をして、それらの収入を社員たちの昇給原資にあてていました。思えば創業期が最も自分が自分に対してブラックだったかもしれません(笑)
なにより、社員の存在です。1人でも人を雇用すると、辛い時や諦めようとした時に“その子たちがついてきてくれている”という事実が自分を踏みとどまらせてくれるんです。
もちろん去っていく子たちもいたし、それは当たり前なのですが、そんな状況下でも私を信じて残ってきてくれた子たちがたくさんいたということ。それが私のなによりの力になっていました。
ついてきてくれる子たちを裏切れないと思ったし、自分が会社を去った後も彼らが安心して働ける会社にしたいし、みんながもっともっと「この会社にいてよかった」と思えるような未来をつくりたい。
そう思うとやっぱり「自分が頑張らなきゃいけない」と踏ん張れるんですよ。もちろん人間なので波はありますが、最終的にはいつも彼らの存在に支えられてきたと思います。
現在準備しているのは、社内ベンチャー制度ですね。将来起業したい社員には、まず2年間うちで働いてもらい、必要であればCVCの形で資本を提供し、連結子会社として独立を支援する仕組みです。
私自身、創業時に資金調達の面で苦労した経験があるので、独立志向のある若手を支援したいという気持ちが強いんです。
奈良県には上場企業も少なく、IPOノウハウも乏しい。そうした課題を解消し、地域の人口や経済を活性化させたい。県とも連携を進めていて、地域ぐるみでスタートアップを支援する体制を築いていきたいと考えています。
失敗を恐れず、ポジティブに物事を考え、相談する力がある人ですね。
私のスケジュールは365日すべて全社員に公開しています。誰でも2時間、面談予約ができる制度もあります。社員の挑戦をサポートする文化があるので、遠慮なく相談してもらえると嬉しいです。
また、社内の勉強会やOJT制度も整備しています。将来的には幹部候補として、会社を引っ張っていきたいという思いを持つ方にも、ぜひ入ってほしいですね。「社長になりたい」という野心、大歓迎です。
我々の技術は、まだ世界にない、新しい未来をつくるためのものです。
DXやAIを通じて、未来を変える。その道のりは簡単ではありませんが、だからこそ面白い。
また、地域を元気にすることも、私たちのミッションの一つです。“今までの発想にない働き方”を一緒に実現し、地域も社会も活性化させていける、そんな仲間を求めています。
共に未来を創る一員になってくれる方を、心からお待ちしています。
多くの悔しさと苦労を経験されたはずなのに、当時を語る表情は穏やかそのもので、お人柄の良さを感じました。
また、自らの努力で獲得してきたノウハウや地位、資金といった持てるすべてを若い世代へ渡していこうとする姿にも頭が下がります。
私もこんな大人になりたい。そのために必要なのはきっとブレない軸でしょう。まずは自分の理念を持てるよう、目前の仕事や社会と精一杯向き合おうと思いました。
編集:佐藤 由理
1990年に、株式会社ヒロコーポレーションとして創業。ホテル向け備品の供給からスタートし、現在ではモバイルキャリアショップの運営、DX関連の先端技術を活用したゼータ事業、日本のモノづくり技術と現代のトレンドを併せた革小物のブランド運営など、多角的に展開している。2021年に現在の社名へ商業変更し、2022年にはTOKYO PRO Marketに上場した。