CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューを受けてくださったのは、monoAI technology株式会社の代表取締役社長・本城 嘉太郎氏です。
“ゲーム”という“好きなこと”を仕事にされた本城氏ですが、「やりたいことがなくても十分幸せになれる」と語ります。その言葉の真意とは、そして好きが見つからなくても“働く”ことを通じて幸せになる秘訣に迫りました。
20代前半の頃は、もともとやりたかったゲーム業界でゲームをつくっていました。
事業とやりたいことが全部マッチしてるような状況だったので、趣味の延長線上で働いているようなイメージで…寝食を忘れて働いていました。
あともうひとつ、自分が学生の頃あまり真面目に勉強してこなかったために、周りに対する負い目が結構あったんですね。みんなが勉強する時期にずっと遊んでしまっていたなと。
ですから社会人になってからは「人の3倍やらないと追いつけないな」という思い込みがあって、平日誰よりも遅くまで会社残ったり、土日も勝手に出勤したりしていましたね。
でも、それは2社目からのことです。
19歳で入った最初の会社は、自分のしたい仕事ではなかったので、昼休みになった瞬間にゲームを立ち上げて、就業時刻が来たらPCをバーンと閉じて帰って家でゲームするみたいな感じでした。
そんなことが半年~1年ほど続いたのですが、やっぱり自分のしたいことをやりたいと思い転職して、自分のしたいことと仕事がマッチしたからこそパフォーマンスが出たんです。
やりたいことと仕事の内容が合致するって、本当に大事ですよね。
そうですね。僕は、後悔がないように生きるのが1番いいんじゃないかなと思っています。
というのも、僕自身が子どもの頃あまり身体が強くなかったために「40歳で死ぬんだ」と思い込んでいたんです。そこから逆算して何をすべきか考えて進んできました。起業したのもそのひとつです。
ほとんどの人が「もっと色々とチャレンジすればよかった」と思って死んでしまうというじゃないですか。それって結構つらいことだなと思うのですが、やはり普通に生きているとそうなりがちです。
“いつか死んでしまう”ということを改めて意識してみると、今見えている以外にもたくさんの選択肢が出てきます。死ぬ瞬間に「あの選択間違ってなかったな」と思えるような、後悔しない方を選ぶのがいいんじゃないかなと思います。
仕事内容に納得できないときが1番つらかったですね。
ものづくりの仕事において「もっと良いものをつくりたい」と思ってどれだけ頑張っても、この予算や納期の中だと評価されづらいクオリティのものしかできないということがありました。
ユーザーの期待に対して、割り当てられている予算や納期が足りないような、「もうちょっと予算が、期間があればもっとよくできるのに」「頑張ってもユーザーの期待を超えられないだろうな」ということが最初からわかりきっているプロジェクトは、割としんどかったですね。
“生活の糧”ということがまずベースにあります。自分の仕事を通じて社会に価値を与える、自分も食べていけたり好きなものを買ったりできるということが、どんな職業のベースにもあり、そういう意味ですべての労働は尊いと思います。
でも、日本は豊かな国なので、働かなくても死にはしないじゃないですか。ですから“生活の糧”にプラスしてもうひとつ考えるとすれば、“社会との関わり”ですかね。
周りの人やお客様と関わって価値を生み出して経済を回すというか…お給料をもらいながらお客様にとっても利益があるようなものを提供する、もしくは、喜んでいただいてお金を頂く。そういったことの一員になれるというのは、すごく充実感が味わえることだと思います。
その中で本当に好きなことでパフォーマンスを出せたら幸せだと思いますが、仮に好きなことがなかったり合致しなかったりしたとしても、最初の2つだけでも十分に取り組む価値があるものだなと思っています。
やりたいことがある方は本当にラッキーだと思いますが、それがなく働く場合は、自分をアジャストしていくことが大事だと思います。
例えばゲームでも、最初つまらないと思っても、途中からはまり出して延々やってしまうことってあるじゃないですか。
最初は与えられた仕事の意味がわからないとか、つまらないと感じることもあるかもしれませんが、やり続けていると自分しかわからない領域ができたり、コツがわかってきて面白くなったりすることもあるので、与えられた仕事に一度集中して面白くなるまでやってみてはどうかなと思います。
また今の若い世代の方々って、僕らと比べると圧倒的に多くの情報の中で生きているじゃないですか。
気軽に多様な価値観に触れられたり、その道のプロに相談したりできるようになって、可能性は昔よりすごく広がっているし、その情報の中で生きている彼らはとても賢いなと思うんです。
そうした良い部分を活かしながら、後悔しない選択肢を選んで頑張っていってほしいですね。
会社は学校と違って成果を上げれば評価されますし、給料も上がっていくという非常にわかりやすい仕組みになっています。それに、自分のがやったことが世の中に影響を与えたり、周りの人を助ける・助けられることにつながったりする“部活動みたいなやりがい”がある、素晴らしいことです。
真剣に取り組んで、自分をアジャストしていくことで幸せになれるんじゃないかなという気はします。
“好き”を仕事にした本城氏が「すべての仕事は尊く、好きなことでなくても取り組む価値がある」と語ってくださったことに、救われたような想いになりました。
選択の自由が広がっている昨今だからこそ、好きを探そうとかえって焦ってしまいがち。しかし必ずしもその道を探さなくとも、幸せになれる_この記事が1人でも多くの、迷える若者に届くことを切に願います。
編集:佐藤 由理
「先進技術で、社会の未来を創造する。」をミッションとして掲げ、自社開発のメタバースプラットフォーム『XR CLOUD』を通じてエンターテインメントから仮想オフィス、バーチャル展示会といったソリューションまで、幅広いメタバースイベントを提供。通信・AI・ゲームエンジンを駆使した時代の先端を行くサービスで、バーチャルとリアルのパフォーマンスを最適化し、社会に貢献している。