CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューを受けてくださったのは、株式会社ココペリの代表取締役CEO・近藤繁氏です。
みずほ銀行からベンチャー企業を経て独立した近藤氏。起業の背景には、アメリカ留学でのカルチャーショックや、数多くの中小企業経営者との出会い、そしてたった一人の社員の言葉がありました。
「いつかは起業したいな」とは思っていましたが、全然、計画的に起業したというわけではないんですよ(笑)
最初の就職先にみずほ銀行を選んだのは、より多くの経営者と会いたかったからです。
経営者に会って色々なことを学びたくて、1番経営者と会える職業ってなんだろうと考えたら、銀行だなと。
ただ僕は大学まで理系で情報工学を学んでいて、そういう学生が銀行へ入るとシステム部とかに配属されるものなので、
自分が銀行を選んだ理由を説明して、「営業をやらせてほしい」と自らお願いし、了承をいただいて支店に配属してもらったという経緯があります。
あと20歳の時に1年ほどアメリカに留学していて、そこで大きなカルチャーショックを受けたことも起業や今の理念につながっている気がします。
僕は愛知県出身でして……愛知はトヨタを中心にしたサプライチェーンの中小企業が多い土地柄なんですね。
もちろんそうした企業がトヨタを支えているのは事実ですが、正直に言うと中小企業って“下請け”のイメージが強かったんです。一方でトヨタに行ったらバンバンザイ、みたいなね。
そういう環境で育って、初めてアメリカへ行って衝撃だったのが、「どの会社で働いているか」よりも「何をしているか」を大事にする文化でした。
たとえば「パソコンで○○してる」とか「水道管の修理してる」とか、そういう“やっていること”が主語になる。それがすごく新鮮で、日本とは違うところだなと思って帰ってきたんです。
はい。
帰国後は銀行に入行し、中小企業向けの融資を担当するようになって、何百人という経営者の方と会わせていただいたのですが、その中で中小企業って、想像していたよりずっと魅力的だなと思いました。
みんな自分のやりたいことや信念に真剣で、キラキラしていて。それがアメリカで感じた「何をやっているかということに誇りを持つ」ことの貴重さと重なったんですよね。
「こういう人たちがもっと輝ける世界を作りたい」という気持ちから起業して、もっともっと活躍できるところを追求して今があるという感じですね。
まず“資金繰り”の問題ですね。
資金繰りって、脳みそを固まらせるんですよ。お金の余裕がなくなってくると、営業の発想も湧かなくなるので、本当に資金面では苦労しました。正直、上場するまで常に苦労していた気がします(笑)
確かに、間接金融での調達については知見がありました。
とはいえ自分で初めて借入の連帯保証の書類にサインする時、手が震えたのを覚えています。借入額が500〜1000万ぐらいだったかな。
銀行員時代に貸す側として慣れてしまっていましたが、自分が初めて借りる側になって、お金を借りるということの覚悟や重みを改めて感じました。
いえいえ。僕としてはただただ目の前の課題をクリアし続けているという感覚で……
資金繰りが苦しいならなんとかする、お客さんがいなければ飛び込み営業をするといった具合に、やり続けてきただけです。
あと、ビジネスの世界では負けたら終わりだと思うのですが、僕にとって負けるの反対は勝つではなくて、ミッションを実現することなんですよ。
勝つというのは事業のミッションビジョンを実現することだし、それを実現したいから走っている。勝ちたいからというより、実現のために負けない。そういう発想な気がします。
これは途中で気づいたことなのですが、頑張る理由は“自分の外”に置いたほうがいいと思います。
自分の中に理由があると折れやすい。でも「ココペリの社員が頑張っているから」とか「うちのサービスを使ってくれているお客様がいるから」とか。そういう外部の存在に引っ張ってもらうと、踏ん張れるんです。
一度、事業が上手くいかず会社をたたむことを考えたことがあったのですが、一人の社員が「私は社長を信じているので、辞めません」と言ってくれて。
それで奮起して、もう一度その事業を立て直すことができました。彼女がいなかったら僕は踏ん張れずに辞めてしまっていたでしょうし、今のココペリもなかっただろうと思います。
本当に有難いなぁ。まさにあれはターニングポイントです。
そうですね。やっぱり社員にはどんどん成長してほしいと思っています。
その上で、成長って“知識×経験”だと思っていて。知識は勉強すれば身につきますが、経験は環境に左右されますよね。
そういった意味では、うちは少人数かつ挑戦を歓迎する文化があるので、経験を積みやすいと思います。
チャレンジして失敗しても、誰も責めない。それがうちのカルチャーなので、失敗を恐れずにどんどん挑んで、経験に変えて、成長していってほしいと思います。
あと“自分の行動でなにかを変えた”という経験をしてもらいたい、とも思うんです。
自分が思い切ってとった行動や発言によって、サポーターや仲間が増えたり、周囲の流れが変わったりすることって往々にしてあるし、そういう経験をすると自分に自信がつくじゃないですか。
その後の人生も変わると思うので、ぜひ社員にはそういったことをどんどん体感していってほしい。それを応援できる会社であり続けたいと思っています。
近藤氏の言葉の端々には、起業家としての強さだけではなく、一人の人間としての温かさがにじんでいて、とても心地の良いインタビューでした。
中でも印象的だったのは、「勝つためではなく、ミッションを実現するために負けない」という言葉。その陰には、仲間と顧客のために「負けられない」という想いもあるのではないか、だからこそ踏ん張れるんだろうなと思いました。
この記事が多くの若者へ届くことを切に願います。
編集:佐藤 由理
2007年設立。中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」を中心に、創業当初から中小企業を支援するサービスを展開しており、2020年には東証マザーズへ上場。2025年、中小・中堅企業の海外展開を支援するビジネスマッチングプラットフォーム「BIG ADVANCE GLOBAL」をサービススタート予定。
全国の金融機関と提携し、中小企業の経営支援と地域経済の活性化に取り組んでいる。