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自分を奮い立たせ、周囲をも巻き込み未来をつくる__“熱狂”について

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#起業#熱狂#挑み続ける文化

ノースショア株式会社・代表取締役社長の石井 龍氏にインタビューしました。
石井氏は、年収120万円の契約社員時代を経て起業するも、初年度でサブプライムショックに遭い、資金も設備も失ったといいます。
それでも“どうなりたいか”を問い続け、仲間を増やし、仕事をつくってきた石井氏の源泉にあったものとは?本インタビューでは、その原体験と“挑み続ける”力について聴きました。

ノースショア株式会社
石井 龍
石井 龍社長のプロフィール画像

高校卒業後にブラジルでサッカー留学を経験し、帰国後はCGや映像制作を学ぶ。CMディレクターとして活躍後、2008年にnorthshore Inc.を設立。一度はバイオ燃料事業で大きな損失を抱えるが、2010年に再起。現在は「No.1 Only1」を掲げ、世界中の子どもたちを熱狂させるフルCG映画制作を目指している。

石井 龍社長のプロフィール画像

「どれだけ熱狂できるか」がその人の未来を大きく左右する

石井さんにとって“働く”とはなんですか。

当社は「熱狂する、プロフェッショナルの集う聖地をつくる。」というビジョンを掲げていまして、これは僕の原体験から来ています。

僕はCGの専門学校に通い、トイストーリーのような映像作品に憧れて、契約社員としてCM業界で働き始めました。
就職氷河期の真っただ中だったので、非常に待遇は劣悪で、夜通し働いても年収190万円ほど。手取りにして月12万円、生活はギリギリでした。ただ不思議と、苦ではなかったんですよね。

2~3日徹夜しても結構へっちゃらで、年間340日、月に400~500時間働いたこともありました。

340日!すごいですね。

でもそれくらいできたのって、やっぱり映像づくりが楽しかったからなんです。
それで人の心を動かして「素敵だね」と言ってもらえるような、そんな瞬間が見たいという一心で没頭できたし、そのおかげで大手のテレビCMをつくる機会を頂けて、独立するきっかけとなって、今につながっている。

だから僕は、学歴や才能以上に、「どれだけ熱狂できるか」がその人の未来を大きく左右すると感じています。
収入のためだと壁にぶつかった時折れてしまいますが、大好きなことなら、その会社で収入が低くても、実績を出してもっといいところに転職するとか、いくらでも可能性を拡げられるじゃないですか。
寝るのを忘れて朝までやっちゃうようなことを仕事をすると、人間って幸せなんじゃないかと思います。

石井 龍社長のインタビューの様子

熱狂できるというのも1つの才能だと思います。石井さんが熱狂できるものと出会えて、熱狂し続けられている理由はどこにありますか?

確かに難しいですね。僕の場合は父親の存在が大きいと思います。
父自身は一流大学を出て、大手企業で働いていたような人でしたが、僕に勉強を強要することは一切ありませんでした。

「Jリーガーになりたい」と言えば「やってみなさい」と応援してくれたし、映像の道に進みたいと伝えたら学費や機材代までサポートしてくれました。

父が僕の意思に対して非常に肯定的で、応援してくれていたからこそ、自分の“やりたい”という気持ちに素直になれたし、没頭できたのだと思います。

人は、“できること”より“どうなりたいか”に集まる

起業後もご苦労はされたと伺っています。

そうなんです。ノースショアを立ち上げた初年度、サブプライムショック(※)の影響で仕事が激減しまして……現金5万円、Mac1台、あとは妻と子どもを連れて、父の実家の6畳間に転がり込んでのスタートでした。

そんな時、前職のつながりを頼って広告代理店に営業に行ったら「今の石井さんに仕事をお願いする理由がない」と言われたんです。実績もチームもない、1人の会社に発注する理由はないと。
確かにその通りで、その時「絶対的に“ノースショアに頼みたい”と思ってもらえる存在にならなければ、この先生き残れないな」と痛烈に感じたんです。

それで、会社案内の一番上に「お客様にとってのナンバーワン・オンリーワンになります」と書きました。
現実は1人の零細企業。資金も設備もない。けれど、“今の自分にできること”ではなく、“どうなりたいか”だけを理念に込めました。
そのチラシを渡した友人のプロデューサーたちには「石井ちゃんは“ロンリーワン”じゃないか」と笑われましたが(笑)
結果的にそのうちの2人が当社へ入社してくれました。

(※編集注:「サブプライムショック」
2008年にアメリカで起きた住宅ローン問題に端を発する世界的な金融危機。多くの企業が倒産・業績悪化し、日本の広告・映像業界にも大きな影響を与えた。)

それは素敵ですね。

ええ。“今できること”ではなく、“どうなりたいか”だけを純粋に考えて掲げれば、最初は笑われたとしても、応援してくれる人やチャンスが集まってくるんですよね。
つまり、他人に笑われても自分が信じ続けられる、言い続けられる、大切にできることを常に語っていくことが大事ですよと。

今置かれている環境や自分のスキルといった前提に囚われず、いかにピュアに自分のしたいことを掲げられるか。痛点が鈍るくらい「これがやりたいんだ!」と思い込んでいるくらいの人が達成しやすいんじゃないかなと思います。

日々1人ひとりが“挑み続けている”、ノースショアという会社

御社としても“挑み続ける”ことを大切にされているとのことですが、石井さんから社員の皆さんに働きかけたりしているのでしょうか。

特に僕から指示をすることはありません。
ノースショアには、僕がなにかを言わなくても、新しい技術や表現、これまでにない領域の依頼に対して「面白そうだ、やってみたい」と動いてくれるクリエイターばかりです。

それはきっと、彼らの中に“叶えたい人生”や“歩みたいキャリア”があるから。僕はそんな仲間に対して「頑張ってね、絶対できるって信じているよ」と、肯定するだけです。

石井さんのお父様のように、ですね。

そうですね。あと、バリューには「Make Fans」という言葉を掲げています。

僕らのゴールは、映像やサイトをつくること自体ではなく、それを通して誰かの心を動かし、企業や商品にファンを生み出すことだと思うんです。
だから「自分は映像屋さんだから映像をつくる」ではなくて、お客様のファンをつくるのに最適なコンテンツや表現を追求しようと。これって簡単なことではないので、自然と“挑み続ける文化”に繋がっているのだと思います。

最後に、若い世代へメッセージをいただけますか。

やっぱり「そればかり考えてしまう」ようなことがあるなら、やったほうがいいと思います。それは“熱狂のサイン”なので。
いくらでもアイディアが浮かんでくる、妄想が尽きないなら、心がそっちを向いているということ。押し込まず、決断してしまいましょう。

やってみた結果うまくいかないこともあるかもしれません。
でも、僕もたくさん失敗してきました。その経験があるからこそ、「じゃあ次はこうしよう」「これは避けよう」と、次に活かす視点を持てた。

特に若いうちの挑戦は、すべてが“価値ある経験”になる。リスクを恐れて動けなくなるより、心が動いた瞬間に、まず一歩踏み出してほしいと思います。

編集後記

「“どうなりたいか”だけを純粋に考えて掲げれば、最初は笑われたとしても、応援してくれる人やチャンスが集まってくる」と、よどみなく言い切る石井氏が素敵でした。 私も迷うことはありますが、たったひとつ「この仕事が大好き」だということだけはわかっているので、勇気をもって突き通そうと思えました。
本記事を読んで、そんなふうに勇気づけられた人が1人でもいたら嬉しいです。

編集:佐藤 由理

「ノースショア株式会社」概要

2008年創業のクリエイティブカンパニー。映像やデジタル表現を軸に、ブランド戦略・課題解決型ソリューションを展開。受賞歴に「日経広告賞 環境部門最優秀賞・環境大臣賞」(2021)、「ADFEST ブロンズ」(2019)、「CANNES LIONS ブロンズ」(2016)などがあり、「No.1 Only1」のミッションのもと、世界を熱狂させる表現を追求している。

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